子どもが文化に出会うということは想像力を育み、自分なりの表現を見つけられる様にするという事。それはアーティストになる為ではなく、豊かな人生を送る子どもの権利です。
そして、子どもと演劇とがすばらしい出会いをする為には、つくる側と観る側の「おとな」が連携して、最良の条件を整えることが大切だと思います。
そのすばらしい出会いのために、CAN青芸が目指すものは作品の想像性と劇場としての環境づくりです。
◎作品について
ー創造力と想像力ー
生活の中で子どもの感じ方は発達段階によってさまざまです。ことに小学生を対象とすると、低学年と高学年では身体的にも感性的にも大きな隔たりがあります。この子ども達が一緒に鑑賞するという演劇公演の役割は、作品を「道徳的」「教訓的」「文学的」なこと、いわゆる統一された「テーマ」に収れんすることではなく、物語や登場人物を楽しむ、感じる、考える、といった観客自身から発していったイメージを大切に出来るような作品づくりが重要だと考えます。
ひとつの作品を論理的な解釈と自分なりの表現に興味を持ち始める高学年の子。自由なイメージを膨らまして自分の想像宇宙で遊んでいる低学年、低年齢の子。本来この年齢差は対象作品を変えて鑑賞するのがベストですが、この異年齢の子どもたちが同時に楽しめるということもひとつの演劇の役割です(年齢幅には限界あり)。それには観客であるひとりひとりの子どもたちが、年齢にかかわらず俳優を通して追体験したり、自己投影したり出来ること。そしてひとつのテーマや、他人と同じ見方や考え方にしばられることなく、たとえ解釈が誤解と矛盾に満ちていても、自分の想像世界を楽しむことが自らの「個性」と「創造力」をつちかっていくことだと思います。そのため、つくり手には科学的で情熱的な子ども観、客観的民主的な社会観、作品の魅力を十二分に発揮できるような卓越した演出と高度な演技力が要求されます。そしてつくり手は、常にその時代の中で「観るべき」「観せるべき」テーマや表現を洗練されたものとして提示していく責任を負っているといえます。
◎環境づくりについて
ー小さな劇場大きな感動ー
私たちは観客数を100名〜200名という数に限定した小会場作品にこだわった芝居づくりをしています。
子ども(ことに低学年以下)には「見たい」と同時に「見られたい」という意識があります。ですから小さな子ども達を含む鑑賞の場合は、観る上で俳優と子ども達の間でアイコンタクトという“同意”が必要となります。俳優はこの同意を取り入れながら物語を進行して行くことが大切です。これが成立すると、舞台で表現される「うそっこの世界」そして「見立て芝居」や「無対象演技」が成立することとなり、お芝居を隣の子と共有する連帯感、舞台と観客との一体感が生まれます。ここに子どもたちの想像性を触発しうるアイコンタクトの「距離の限界」、俳優が“同意”を取り入れる「観客数の限界」があります。さらに海外の小学校公演では学年単位、クラス単位での鑑賞が当たり前のようにあります。これは子どもたちが観客として「自分は特別に選ばれ、認められた存在」として感じられる、ということも含まれております。こうした子どもの視点からとらえた劇場づくり、子どもたちの「琴線にふれる」作品づくりのために「小会場作品」というこだわりが生まれました。
子どもにとって素晴らしい芸術との出会いは、楽しみや癒しを超えて人をつくり人を生かします。そしてすぐれた演劇との出会いは「心を動かし、困難を克服し、幸せに生きる力を必ず与えてくれるもの」であると確信いたします。
劇団CAN青芸